仕事を休もうかと考えている方/既に休まれている方/職場に戻りたい方/職場に戻られた方から相談を受けることがあります。それぞれ置かれている状況は異なり、悩んでおられる内容も異なるのですが、基本的な事項についてまとめてみました(2021/02/05ブログ)。
以下は、その改編です。
いざ休職したとしても、どう過ごせばいいのか様々な悩みが出てくることでしょう。大原則として、休職中は、脳を整えることに励まなくてはなりません。以下に、そのコツを記します。
最優先は、睡眠です
脳は非常にデリケートな臓器です。睡眠がうまく取れないと、脳は動作不良を起こすため、よく眠ることが大切です。休職に入るまで、自分の睡眠時間を削って忙しさに対処しておられた方も、休職に入った以上、脳を休めるため5時間以上は布団の中にいるようにしましょう。つまり、疲れたら眠る/朝はゆっくり起きる/昼寝をするなどの行為が推奨されます。
可能なら、できるだけ決まった時間に起きるようにします。その際の起床時間は、理想の時刻や起きたい時刻ではなく、あくまでも自分が目を覚ますことができる時刻にすることが大切です。
ということで、自宅で療養される方は「規則正しく生活しなきゃ」と最初から焦ってはいけません。生活リズムにはこだわりすぎず、自分なりに入床/起床時間を整えてゆっくり眠れるようになりましょう。「ダラダラした生活だと復職時に困る」と思われるかもしれませんが、ゆっくり眠れるようになった後、生活リズムは少しずつ整えていけばいいのです。
しかし、中には、なかなか、ゆっくり眠ることができない方もおられます。 というのも、病気(鬱や適応障害など)になると不眠症状が出るからです。睡眠がうまく取れない方は、主治医の先生に相談して睡眠を整えるお薬を処方してもらうことも1つの解決法です。また、最近では不眠症に対する認知行動療法(=自分自身の生活習慣と、睡眠に対する考え方を見直して、適切な睡眠習慣を取り戻す治療)も盛んになってきています。書籍も出ていますので、必要な方は目を通してみることをお勧めします。
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次に、食事に目を向けます
脳は非常に大食らいの臓器です。脳の重さは全体重のわずか2%程度にも関わらず、食事で摂取したエネルギーの約4分の1を脳で消費してしまいます。つまり、脳がしっかり働くためには、きちんと食べることが必要なのです。特に、脳はタンパク質と脂質でできています。これらの原材料となる食材(タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)を多く摂ることが必要です。
しかし、中には、なかなか、しっかり食べることができない方もおられます。 というのも、病気(鬱や適応障害など)になると、食欲不振や特定の食品のみを摂る症状が出るからです。食事がうまく取れない方は、主治医の先生に相談して食欲を出すお薬を処方してもらったり、サプリを使うことも解決法です。 基本的には、自分が食べられるものから始めましょう。徐々に量を増やし、旬のものを選ぶことで種類も増やしていきましょう。
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更に、運動に目を向けます
ゆっくり眠ることができて、食べられるようになった方は、低下した体力の回復に取り組みます。別に筋肉ムキムキを目指す必要はありませんが、日常生活を息切れせずに過ごせる最低限の体力を取り戻していきましょう。
「自分は体力は大丈夫なので」と言われる方もおられますが、セラピーに来られた後の帰り道や翌日に、急に疲労を感じてダウンする方もよくいらっしゃいます。これはセラピーに来るため、いつもと違うことをして心身が疲労したのでしょう。その際は「こんなことで疲れるなんて情けない」と嘆く必要はありません。まずは現状把握ができたことを評価しましょう。それから、今の自分にあった運動(軽い散歩やストレッチなど)に取り組んでいきます。
ちなみに、散歩の際に、無理をしないため万歩計を活用することがおススメです(スマホのアプリで色々あります)。何日か記録を取って自分の1日の平均歩数を把握し、その平均歩数よりも少しだけ多く歩くことが体力回復のコツです。歩きすぎも、歩かなさすぎも、いけません。
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そして、楽しいことに目を向けます
体力が少しずつ回復してきたら、徐々にこころのリハビリにも取り組んでいきましょう。これは、自分のこころが喜ぶこと・いい気分になることを探していく作業です。平たく言うと、生活の中での楽しみをみつけてください。ただし、人によっては、これが意外と難しいかもしれません。病気(うつ)になられた方は、そもそも自分は何が好きなのか、自分は何が心地よいのか、自分は何を食べたいのか、など様々なことが分からなくなっておられます。その感覚を取り戻すことがリハビリの第一歩です。
ということで、休職中だからと言って、家に引きこもったり、1日中真面目に過ごす必要はありません。日常生活に必要な買い物などのお出かけ・リハビリのための外出・趣味などを、自分のペースで楽しみましょう。これらは、常識的な範囲であれば何も問題ありません(もちろん、海外旅行に行ったり、朝からパチンコ屋で稼いでいたり、SNSに楽しそうな写真をあげたりすれば、「働けるだろ」と怒られちゃうでしょうが・・・)。
病気(鬱や適応障害など)の方の状態は、こころのガソリン(やる気)が入っていないのに、無理やり車を走らせているようなものです。ガス欠でアクセルを踏んでも、車(=あなた自身)は前に進みませんし、下手すれば故障してしまいます。自分がちょっとでも楽しいと感じられるものこそが、こころのエネルギーとなりますので、腰を据えて探していきましょう。小さな楽しみを積み重ねることで、はじめてこころのエネルギー補充が可能となります。
ただ、人によっては、楽しくもないのに達成感を求めて資格取得の勉強や激しい運動をして疲れたり、色々と手を出し過ぎて訳が分からなくなってしまう方もおられます。そういうことは避けるべきことですが、長い目で見れば、意外にそういう失敗もよいものです。何故なら、自分自身にシッカリ向かい合い、自分のペースを取り戻す練習となるからです。道に迷った時は、立ち止まって考えたり、周囲の人や、人事・医療・福祉の援助者に相談したりしましょう。
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