仕事を休もうかと考えている方/既に休まれている方/職場に戻りたい方/職場に戻られた方から相談を受けることがあります。それぞれ置かれている状況は異なり、悩んでおられる内容も異なるのですが、基本的な事項についてまとめてみました(2020/11/15ブログ)。
以下は、その改編です。
いざ休職しようと決心しても、どうすればいいのか様々な悩みが出てくることでしょう。以下に、休職までの手順と、この時期特有のお悩みに対するアドバイスを載せました。
休職までの流れと、金銭面
休職とは、労働契約を維持しながら一定期間休みをとれる制度のことです。しかしながら、休職制度は法律で定められている制度ではありません。そのため休職を取る際は、会社のルールに従って休む必要があります。それ故、あなたの会社の就業規則を読んで(場合によっては、上司や人事・総務の方に「休みたい」と相談して)、会社独自の休職の手続きについてしっかり理解しましょう。
自ら休職を申し出る場合は、一般的には、以下の手順となります。
1.医療機関受診の予約
自ら休職を申し出る場合は、医療機関にかかり、医師から休職が必要な心身の状態(鬱や適応障害など)であるという診断書を書いてもらわなければなりません。
不調が続くようであれば、まずは医療機関を受診しましょう。会社に産業医の先生がおられて(あなたが既に懇意にしている場合は)産業医の先生に診察をお願いすることもできます。しかし、産業医の先生の専門が外科だったりする場合もありますので、現実的には、自分が今後通いたい精神科や心療内科の先生の診察を受けるといいでしょう。
その際は、とにかく早めに予約を取ります。何故なら、多くの精神科や心療内科の初診は予約制です。そして人気のあるクリニックであれば、2~3ヶ月待たされてしまうこともザラです。ですから、クリニックに電話をして「予約いっぱいなんですよね」と言われても、めげずに「それでも構いません」と予約をとにかく入れましょう。もし待っている間に元気になったら、予約をキャンセルすればいいだけです。また、どうしても待てない心身の状態の時は、お住まいの近くの精神保健福祉センター、熊本市内であればこころの健康センターに相談を。早目にみてくれる医療機関を紹介してくれます。
2.要休職の診断書を医師に書いてもらう
診察では、心身の調子が悪いこと・できれば休みたいことを医師に相談してみましょう。休職の必要性があるかどうかは、あなたの話を聞いた医師が、その後始まる治療の効果をみながら判断します。そのため、一定期間、同じ医師にかかる覚悟が必要です。しかし、あなたの症状が重く、すぐに休んだ方がいい場合は、即日、診断書が発行される場合も。この辺は、ケースバイケースです。
3.診断書を会社に提出
診断書を会社に提出することで、正式に休職を開始できます。ただし、診断書を提出しなければ欠勤となりますので、自分で手続きができない場合は、家族など身近な人に頼みましょう。 できれば休職に入る前に、休職できる期間の確認・休職中の金銭面の確認(給与支給の有無、健康保険や厚生年金といった社会保険の支払いについて)・休職中の会社への連絡はどうするかど、確認しておきましょう。これらを前もって確認することで、あなたは安心して休みに入ることができます。もちろん、心身がきつい時に、無理に確認する必要はありません。こういった確認は、休み始めた後から行ってもいいですし、家族の方でも行えます。
なお、休職の原因が上司のハラスメントにあり、上司に連絡を取ることが適切でない場合には、人事・総務の方に事前に事情を伝えましょう。
4.休職開始および金銭面について
多くの会社では、休職を取るにあたり、まずは有給消化を優先します。何故なら有給休暇は100%給与が支給されるからです。ただし、会社によっては(復職した後のことを考えて)あなたの有休を完全に消化させず、少し残すように促される場合もあります。
有給消化すると、会社によっては病気休暇が取れます。この制度がない会社もありますが、制度がある会社だと約80~100%の給与が支給されるでしょう。
その後は、私傷病休職(ケガや病気の療養目的で労働者から申し出る休職)へと変わります。私傷病休職は、仕事自体は休めても、会社からの給与はゼロになります。代わりに、健康保険組合から傷病手当金が支給されます。これは、私傷病休職中の生活を保障する制度です。条件にもよりますが、給与の約60%の金額が最長1年半もらえます。
なお1年半というのは、障害年金と関係があります。1年半経っても病気が治らない場合は症状が固定されたとみなされ、障害年金の申請が可能となります。
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仕事が残っている場合
「仕事が残っているので済ませてから休みたい」「同僚に迷惑をかけたくないので引継ぎをしなくては」と皆さん言われます。セラピストは、あなたのそういう真面目で責任感の強い所は大変好ましいと感じます。しかし、病人としての心構え、および組織運営という観点から見ると問題大アリであることも覚えておきましょう。
というのも、休職に入る以上、あなたは全身全霊をかけて休まないといけません。休んで元気になることが仕事なのです。ちなみに、世間では『うつの人に頑張れと言っていけません』とよくアナウンスされていますが、セラピストは「とにかく頑張って全力でゴロゴロするように」と口をすっぱくして言っています。それくらいシッカリと病人としての心構えを持たないと、病気から立ち直ることは難しいからです。
また、要休職の診断書を会社に提出した以上、ドクターストップがかかった訳ですから、会社側としては、あなたを直ちに休職させないと安全配慮義務(=労働者の身心と健康を守る義務)違反になってしまいます。確かにあなたが急に抜けることは、会社や同僚にとってダメージでしょう。でも、本来は、普段から皆で支えあって仕事を回すこと、誰か1人がいなくても仕事は回るようにしておくこと、を心がけなければならないのです。淋しく思われるかもしれませんが「あなたがいなくても会社は回る」というのが健全な組織運営なのです。
それでも、あなたが「引継ぎだけはしないと安心して休めない」という場合は、会社や上司にそのことを伝えて、本当に最低限のものだけ指示をもらった上で行いましょう。絶対に、自己判断で動いてはいけませんし、何より無理をしてはいけません。そして、休職に入ったら(雇用されている以上、会社からの連絡は必要最低限取れる形にしておかないといけませんが)業務のこまかい話は遠ざけ、療養に専念することが賢明です。
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ウワサになることが心配な場合
「休んだことが社内でウワサになるかも」と心配になられる方は多いです。実際、同じ職場で働いている以上、あなたが休むことは確実に皆に知られます。ただし、病名や病状などは個人情報となりますので、基本的に必要最低限の人(人事や総務担当者)にしか、詳しい情報は伝わらないと考えて構わないでしょう。
つまり、現場レベル(同僚)に、あなたの個人情報は伝わらないのですが、これまで一緒に働いてきた仲間は、あなたをよく見ています。あなたの休む理由が、こころの病気(うつ)であることに気付いている可能性は正直ゼロではありません。ひと昔前と異なり、こころの病気に対する啓蒙活動が社会でなされているため「うつで休みかな?元気になって戻ってこれますように」とあたたかく見守って下さる同僚もいるでしょう。ですが、病気の知識がなく差別や偏見で「気合いや根性が足りないからだ」「自分の仕事が増えて嫌だ」と冷たく捉える同僚も少ないながらもいるでしょう。こういった部分は、仕方ないと割り切ることが対処法となります。
それに、今の時代、がん治療や育児や介護で休職する人も多くなっています。皆で助け合いながら、前に進んでいく必要があるのです。「自分が良くなった時には、周りに困っている人がいたら恩返ししよう」と考えておくことも対処法となります。
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